- 国内初の半導体検出器搭載SPECT装置、画質の向上と検査時間の短縮を実現 -
~ 第50回日本核医学会学術総会に出展、GEヘルスケア製最新PET/CTのモデルチェンジ機種も展示 ~
GEヘルスケアグループ(以下「GEヘルスケア」)の世界中核拠点の1つであるGEヘルスケア・ジャパン株式会社(本社:東京都日野市、代表取締役社長:熊谷昭彦)は本日11月10日(水)、半導体検出器を搭載した国内初の心臓検査用SPECT装置(単光子放射断層撮影装置)「Discovery NM 530c(ディスカバリー・エヌエム530シー)」を、最先端の診療・研究を手掛ける大学病院や基幹病院、循環器病院を主対象に発売します。
SPECT装置とは、体内に投与された放射性医薬品から放出される単光子の微弱なガンマ線やX線を検出し、その分布を画像化する装置で、Discovery NM 530cは核医学検査の中でおよそ4分の1の高い割合を占める心臓検査*1用SPECT装置のGEヘルスケアにおける最上位機種です。Discovery NM 530cの最大の特長は、GEヘルスケアが独自開発した「Alcyone Technology(アルシオン・テクノロジー)*2」の搭載で、臨床用SPECT装置として国内で初めて、体内からの放射線を直接電気信号に変換する半導体検出器*3の実用化に成功したこと、ならびにGEヘルスケア製SPECT装置で初めて、検出器を半リング状に配置し同時に180度方向のデータ収集を可能にしたことです。これらの新技術の採用による主要メリットは以下の通りです。
(1) トレードオフにある分解能と感度をともに向上し高画質な撮像を実現
従来の検出器では、体内から放出される放射線を一旦光に変えてから電気信号に変換するため放射線の損失が大きく、検出効率の低下を招いていましたが、Discovery NM 530cでは体内からの放射線を直接電気信号に変換する半導体検出器の搭載で、エネルギー分解能*4を約2倍に高めたほか、トレードオフにある感度と空間分解能をそれぞれ4倍と2倍に高める(GEヘルスケア製心臓検査用SPECT装置「Ventri(ベントリ)」との比較)独自のシステムデザインの採用で、クリアな画像撮影を実現しました(実際の撮影画像は次ページをご覧ください)。
(2) 検査時間を約4分の1に短縮し患者の負担を軽減
Discovery NM 530cはGEヘルスケア製SPECT装置で初めて、小型の半導体検出器を半リング状に配置し、検出器を回転させることなく、同時に180度方向のデータ収集に成功、従来の検出器を回転させて撮影していた際に発生していたアーチファクト(偽像)を削減するとともに、患者の安全性向上や検査時間の短縮を実現しました。半導体検出器の採用と小型検出器の180度方向への配置による多方向からの同時データ収集で、1回あたりの検査時間を従来の約11分から約3分へと約4分の1に短縮(Ventriとの比較)、患者の負担を大幅に削減します。
(3) 新たな臨床応用への可能性を開拓
高感度検出器による同時データ収集に成功したことで、投与した放射性医薬品の集積状況やクリアランスを時系列で追いかけるDynamic SPECTが可能となり、冠動脈の狭窄度合いの指標である冠動脈血流予備能や心筋血流量の測定につながることが期待されています。また、複数の放射性医薬品(例:Tc-99m、I-123など)を同時に投与して、一度で複数の検査を実施する2核種同時収集の臨床応用など、同装置の高いエネルギー分解能をはじめとする特長を生かした検査法への利用拡大が期待されています。
SPECT装置は1965年以降現在に至るまで、ヨウ化ナトリウムの単結晶とPMT(光電子増倍管*5)を組み合わせた検出器が搭載されてきましたが、同検出器は放射線を一旦光に変えてから電気信号に変換するため放射線の損失が大きく、検出効率の低下を招いてきたほか、エネルギー分解能と画像自体の分解能が十分でなく画質の低下につながっていました。この解消に向け、20年近くにわたり各社が半導体検出器の開発に取り組んできましたが、技術面やコスト面などから実用化に至りませんでした。
そのような中、GEヘルスケアでは独自の半導体検出器向け総合システム設計技術「Alcyone Technology(アルシオン・テクノロジー)」を心臓検査用装置向けに開発することで、半世紀ぶりにこの課題を克服、国内の臨床用SPECT装置として初めて、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)を使用した半導体検出器の実用化に成功しました*6。
Discovery NM 530cは2009年3月に世界に先駆けて米国で発売されて以来、米メイヨークリニック(ミネソタ州)など既に全世界で約40台が稼働し、導入医療機関から高い評価を獲得しています。
国内の核医学診断装置の市場規模は年間40億円の規模を持ち、当社は約30%のシェアを有しています。当社は、今回発売する心臓検査用装置Discovery NM 530cを、最先端の診療・研究を手掛ける大学病院や基幹病院、循環器病院、ならびに汎用型のSPECTを保有している総合病院などを主対象に積極的に販売します。また、Discovery NM 530cに加えて、2008年10月に発売した心臓検査用装置「Ventri」と汎用型の「Infinia(インフィニア)」シリーズの3ブランドを有する強みを生かし、幅広い医療機関に対して核医学診断装置の全ラインアップの拡販を狙います。
当社では、11月(木)~13日(土)に大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)で開催される第50回日本核医学会学術総会に、Discovery NM 530cをはじめ、2009年4月に発売した、Motion Freeをコンセプトとした高感度PET/CT「Discovery PET/CT 600(ディスカバリー・ペットシーティー・600)」のモデルチェンジ機種を出展します。
本Discovery PET/CT 600は、空間分解能補正アルゴリズム「SharpIR(シャーパー)」を新たに搭載した3D逐次近似画像再構成法「VUE Point HD-S(ビューポイント・エイチディーエス)」を採用し、従来課題とされてきたPETの撮影辺縁部位の空間分解能を高めたほか、トレードオフにある高画質と低被ばくを両立する新画像再構成技術「エイサー(ASiR:Adaptive Statistical Iterative Reconstruction)」をPET/CTとして初搭載した装置です。
GEでは、世界が直面する深刻な医療問題の真の解決を目指して、2009年5月にヘルスケアに関する戦略「ヘルシーマジネーション(healthymagination)」を策定しました。この戦略では、2015年までに60億ドルを投じて、地域に適した技術開発、ヘルスケアITの加速、格差のない医療の提供、在宅医療の推進の4分野で、100種類のイノベーションを実施し、15%の医療コストの削減、15%の医療アクセスの拡大、ならびに15%の医療の質向上を実現することを目指しています。ヘルシーマジネーションの詳細は www.healthymagination.com をご参照ください。
*1 第6回全国核医学診療実態調査中間報告によると2007年度の核医学検査の割合は心筋が25.6%
*2 Alcyone Technology(アルシオン・テクノロジー)は半導体検出器の特長を生かすシステム設計の総合技術で次の4つの革新的なテクノロジーで構成されている。
1. ガンマ線を電気信号に直接変換する半導体検出器技術
2. 検出器を回転させないSPECTデータ収集技術
3. 感度と分解能が効率的な集束コリメーション技術
4. 最適な画質を得るための3D逐次近似画像再構成技術
*3 半導体検出器はp層/空乏層/n層から構成されており、入射した放射線の電離作用により生成された電子・正孔対を測定することにより放射線を直接検出する。Discovery NM 530cではCZT(Cd,Zn,Te:テルル化亜鉛カドミウム)検出器を採用している
*4 エネルギー分解能は放射線のエネルギー測定の精度を表す指標。高いほうがより高精度のエネルギー測定が可能
*5 光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)は、光電効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を基本に、電流増幅(=電子増倍)機能を付加した高感度光検出器
*6 GEヘルスケアは2010年11月1日、Alcyone Technologyに不可欠なテルル化亜鉛カドミウム(CZT)を製造するオルボテック・メディカル・ソリューションズ(Orbotech Medical Solutions、本社:イスラエル)の事業買収に合意したことを発表。この件に関する詳細は以下のプレスリリースをご参照(英文)
http://www.genewscenter.com/content/Detail.aspx?ReleaseID=10926&NewsArea...
製品名(括弧内は承認名称) | 発売日 | 希望小売価格 | 初年度国内 | 医療機器認証番号 |
Discovery NM 530c (核医学診断用装置Discovery NM 530c) | 2010年 11月10日 | 5億円(税抜き) | 5台 | 22200BZX00861000号 |
Discovery PET/CT 600 (X線CT組合せ型ポジトロンCT装置 Discovery PET/CT 600) | 14億2,400万円(税抜き) 主力のDiscovery PET/CT 600 Motion | 10台 | 221ACBZX00029000号 |
GEヘルスケア・ジャパン株式会社は、CT(コンピューター断層撮影装置)やMR(磁気共鳴断層撮影装置)などの医療用画像診断装置やヘルスケアITをはじめ、メディカル・ダイアグノスティクス(体内診断薬)や生体情報モニターから、創薬、バイオ医薬品、ならびに医療機関の経営支援に至るまで、幅広い分野にわたる専門性を生かし、次世代の患者ケアをデザインする先端的な医療技術ならびに医療サービスを提供しています。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のヘルスケア事業部門であるGEヘルスケアの日本での中核拠点として、現在GEが全世界で推進している「ヘルシーマジネーション」戦略にもとづき、医療コストの削減、医療アクセスの拡大、ならびに医療の質の向上を実現する革新的な製品やサービスの開発を継続しています。GE横河メディカルシステムとGEヘルスケア バイオサイエンスが2009年8月1日付で事業統合し、「GEヘルスケア・ジャパン株式会社」としてビジネスを開始。2010年1月1日現在の社員数は1,890名、国内で展開する事業所数は55カ所、2009会計年度(2009年1月~12月)の総売上は約1,190億円。ホームページアドレスは www.gehealthcare.co.jp
GEヘルスケア・ジャパン株式会社 広報 松井亜起