MRIによる非侵襲的な肝疾患の進行度診断への道を拓く !
「沈黙の臓器」の状態を患者負担少なく、高い精度で観察
患者数の上昇と罹患者の高齢化が進む肝疾患の的確な診断・治療への貢献に期待
医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー、GEヘルスケア・ジャパン株式会社(本社:東京都日野市、社長:川上潤)は本日8月30日(木)、国内初となる、非侵襲的な肝疾患の進行度診断を可能にするMRI(磁気共鳴断層撮影装置)用の新技術「MR Touch(エムアール・タッチ)」を、全国の大学病院や地域基幹病院、研究機関、肝疾患診療連携拠点病院を主対象に提供開始します。
MR Touchは、外部から与えられた振動をもとに、MRIで体内組織の弾性(elasticity)を画像化するMRエラストグラフィの技術を応用して、組織の相対的な硬さを色分け表記できるのが最大の特長です。得られた画像に設定したROI(関心領域)*1の測定値は肝臓の相対的な硬さ(弾性)を反映しており、臨床的には国内の高齢化に伴い罹患数が増加傾向にある肝疾患の進行度診断に高い有用性が期待されています。
非侵襲的に肝疾患の進行度を診断し、より的確な治療への貢献が見込まれるMR Touch
自覚症状がほとんどないまま進む肝疾患は、正常肝→肝炎→肝硬変と症状が悪化するのに伴い、組織が硬くなる線維化が進むのが特徴です。線維化を調べるにはこれまで、針を刺して肝臓組織を取り出す肝生検や超音波診断装置を使用したエラストグラフィがありましたが、侵襲的な生検は出血などの重篤な合併症の危険性もあり、また検査ごとに入院が必要なことから、患者負担が大きく、繰り返しの検査がしにくい環境にありました。また超音波のエラストグラフィは、肝生検と同様、肝臓の一部分の硬さしか分からないために、部分的に肝臓が硬くなっている場合には見逃してしまう可能性がありました。
そのような中、MR Touchでは通常のMRI検査を2~3分延長させることにより、非侵襲的に肝組織の相対的な硬さを広範囲にわたって観察できるため、完治まで長年にわたり何度も診療の必要があった肝疾患の進行度を、患者負担を減らしながらより高い精度で診断できると期待されています。肝疾患の進行度を把握できることで、インターフェロンによる肝炎の治療を的確なタイミングで開始できる可能性があるなど、MR Touchは肝疾患の治療への貢献も期待されています。
非侵襲的に肝臓の相対的な硬さを観察可能なMR Touch
(通常のMRI画像に、MR Touchによる肝臓の相対的な硬さを色分けした画像を組み合わせて表示)
MR Touchの仕組み:肝臓領域に振動を与えながらMRIで組織の相対的な硬さを画像化
MR Touchは、アクティブ・ドライバーと呼ばれる振動を発生させる外部加振装置と、パッシブ・ドライバーと呼ばれる振動を人体に伝播させるためのデバイスから構成され、これらの2つの装置を用いて、肝臓領域に対して振動を与えながらMRIで組織の相対的な硬さ(弾性)を画像化します。
画像化する際は、まずパッシブ・ドライバーを患者の胸に当て、アクティブ・ドライバーで空気の振動を発生させます。空気振動はケーブルを伝わって患者の胸元に誘導され、円盤状のパッシブ・ドライバーが患者の胸壁を揺らします。胸壁から伝わった振動波が肝臓内を通過していく様子を、MRIの位相画像からWave Imageとして可視化。可視化した振動波の波長変化から相対的な硬さを算出することで、組織内を硬さによって色分けしたElastogram(弾性マップ)を得ます。
MR Touchは、本年2月に発売した当社製MRI「Discovery MR750w 3.0T(ディスカバリー・エムアール750ダブリュー・3.0テスラ)」と「Optima MR450w 1.5T(オプティマ・エムアール450ダブリュー・1.5テスラ)」にオプション搭載できます。
MR Touchは米ゼネラル・エレクトリック(GE)が2009年5月に立ち上げた医療に関するビジネス戦略「ヘルシーマジネーション(healthymagination)」の厳しい認証審査をクリアした製品で、2009年の米国での発売を皮切りに、現在約30カ国で販売されており、世界中の顧客医療機関から高い評価を獲得しています。
国内では本年7月に福岡大学に先行導入され、稼働を開始しています。
国内の肝疾患の現状
現在の国内の慢性肝炎患者数は約200万人で、B型・C型ウイルス性肝炎が約8割を占めます*2。このうち肝硬変に進むのは40万人で、B型・C型ウイルス性肝炎からの移行が7割を占めます*3。肝硬変が進んだ肝がんの死亡者数は年3万5,000人で、がんによる死亡者数の第4位となっています*4。
現在の肝炎治療方法の中で、ウイルス性肝炎を根治できるものとして期待されているのがインターフェロン治療ですが、その治療効果を大きく左右するのが投与の開始時期だと言われています。
なお、肝疾患の罹患率は特にアジア人に多く、世界の肝がん患者の約8割はアジア人が占めています。また国内では肝炎罹患者の高齢化や生活習慣の変化などから、肝がんの発がん年齢の平均値が1986年~1990年の62歳から、2001年~2005年には69歳へと1割以上も高まるなど、肝がん患者の高齢化が進んでおり*5、より一段と低侵襲な診断・治療が求められています。
当社の中期戦略・肝疾患に対する取り組み
当社は現在、GEのヘルシーマジネーションにもとづき、国内で中期的に「Silver to Gold」(シルバー・トゥ・ゴールド)戦略を展開しています。これは、世界に先駆けて日本が迎える超高齢社会を踏まえ、高齢化に伴う課題を解決するソリューションを総合的に開発・提供することで、高齢世代(シルバー)の生活の質(QOL)を高め、幸せな輝かしい人生(ゴールド)を送れるようにしようというものです。
このSilver to Goldの一環として、当社では現在、高齢化を受けて今後日本での罹患数が急速に高まると見込まれており、かつ画像診断に対するニーズが高い*6肝疾患を重点ケアエリアの1つに定め、診療に必要な製品群やサービスを組み合わせた総合的なソリューションを提案しています。
肝疾患の診療の流れをみると、まず造影剤を使用した超音波診断装置やコンピューター断層撮影装置(CT)、MRIで診断し早期発見や進行度の確定につなげ、発見後の治療の段階では、超音波診断装置によるガイド下のラジオ波焼灼治療(RFA)や血管造影撮影装置(アンギオ装置)撮影下の冠動脈科学塞栓術(TACE)を施します。そして治療後はCTやMRI、超音波装置などで経過観察を行うといったように、肝疾患の診療には複数の装置や薬剤を組み合わせて使用するケースが多くなっています。
そこで当社では、今回発売するMR Touchをはじめとする先進技術や製品を包括的に医療機関に提案することで、肝疾患の早期発見や治療精度向上への支援を強化し、国内の肝がん撲滅の一助となることを狙います。その上で、日本で肝疾患に最適なソリューションモデルを創り、世界に展開していくことも目指します。このように当社は、肝疾患をはじめとする超高齢社会に対応した優れた医療ソリューションの提供を図り、「人にやさしい、社会にやさしい」医療の実現に貢献することを目指します。
市場環境・販売戦略
当社は、3Tの磁場強度を有する高性能機種からオープン型装置まで、多岐にわたる医療機関のニーズに対応する幅広いMRIのラインアップを揃え、これまでに2,400台以上の国内納入実績を誇ります。特に当社が開発・製造し、省スペースと高機能を高い次元で融合した「Signa HDe」は2005年12月の発売以来、現在までに190台を超える国内出荷を達成している(含後継機種「Optima MR360」「Brivo MR355」)ほか、3T MRIにおいて113台の納入実績(2012年8月30日現在)を誇るなど、当社は国内の1.5T以上の高磁場強度でのMRI市場において約3割のトップシェアを有しています(自社調査)。
2011年の3T MRIの国内市場規模は約90台で、2012年は診療報酬のプラス改定などの影響で100台を超えると見込まれています。また同改定に伴い、1.5T MRIの市場も拡大すると予測されています(自社調査)。当社は今回発売するMR Touchを既に対象装置を導入している医療機関に積極的に販売するほか、同技術の臨床的価値を大学病院や地域基幹病院、ならびに大規模医療施設を主対象に訴求することで新規顧客開拓を進め、国内のMRI市場でトップの地位を獲得することを目指します。
MR Touch本体:アクティブ・ドライバー
MR Touch本体:パッシブ・ドライバー
製品名: | MR Touch(エムアール・タッチ) |
希望小売価格: | 6,300万円(税込み) |
発売日: | 2012年8月30日(木) |
初年度国内販売目標: | 20台 |
その他、本資料に記載された装置の製品名/薬事販売名/医療機器認証番号は以下の通り
製品名 | 薬事販売名 | 医療機器認証番号 |
Discovery MR750w 3.0T | ディスカバリーMR750w | 223ACBZX00061000 |
Optima MR450w 1.5T | オプティマMR450w | 223ACBZX00032000 |
Signa HDe | シグナ エコースピード | 20900BZY00067000 |
Optima MR360 | 磁気共鳴断層撮影装置 Optima MR 360 / Brivo MR355 | 222ACBZX00009000 |
Brivo MR355 | 磁気共鳴断層撮影装置 Optima MR 360 / Brivo MR355 | 222ACBZX00009000 |
*1: ROI(ロイ)とはregion of interestの略。CTやMRI、核医学装置などの撮影画像上で、測定したい臓器や部位を取り囲むように線を引き、その領域の各種数値を計測したり、数値の時間変化を時間放射能曲線として表示したりする。この領域をROI(関心領域)という
*2: 出典:肝炎対策推進室
*3: 出典:日本肝臓学会2011
*4: 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター(2009)
*5: 出典:矢倉道泰 et al (2007) "肝臓 48巻12号 598-603"
*6: 臨床医師1,000名に対するアンケート(自社調査)
GEヘルスケア・ジャパン株式会社は、ゼネラル・エレクトリック(GE)のヘルスケア事業部門であるGEヘルスケアの中核拠点の1つとして、先端的な医療技術ならびに医療・研究機関向けの各種サービスを提供しています。医療用画像診断からライフサイエンス(生命科学)まで幅広い分野にわたる専門性を駆使しながら、GEの世界戦略「ヘルシーマジネーション」で掲げる「医療コストの削減」「医療アクセスの拡大」「医療の質の向上」の実現に向けて、国内外の医療・研究施設を中心に革新的な製品やサービスをお届けしています。主要取扱製品は、CT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴断層撮影装置)、超音波診断装置、医療用画像ネットワーク、メディカル・ダイアグノスティクス(体内診断薬)、生体情報モニタ、液体クロマトグラフィー装置、細胞解析装置。2012年7月1日現在の社員数は2,140名、国内の事業所数は55カ所。
ホームページアドレスは www.gehealthcare.co.jp (ライフサイエンス統括本部: www.gelifesciences.co.jp )。
GEヘルスケア・ジャパン株式会社 広報 松井亜起