ニューヨーク・タイムズ紙は3月19日付けで、福島第一原子力発電所に使用されているマークⅠ型沸騰水型原子炉(BWR)格納容器について図を用いてオンライン記事を掲載しました。記事内で、BWRと加圧水型原子炉(PWR)について誤解を招きかねない比較がなされているなど、技術に関して事実とは異なる報道がされているため、ここに事実関係をご説明いたします。
記事中、BWRの「格納容器はシンプル」だとされています。シンプルであるがゆえに脆弱であるという印象を招く表現ですが、これは事実と異なります。格納容器に求められる設計条件が異なります。PWRは2,000ポンド毎平方インチ(psi)以上の運転圧力で運転されるのに対してBWRはその半分、1,000psiほどで運転されます。PWRの格納容器内部で漏れが発生した場合、その圧力が高いため、瞬間的に大量の蒸気が高速で放出されることになります。そのような大量の蒸気の放出に耐えるため、PWRの格納容器は内部に多くの空間をもつ設計としなければならないのです。
他方、BWRは運転圧力が低いため、蒸気漏れの勢い衝撃も相対的に小さくなります。圧力の低下速度がPWRほど速くないため、BWRの格納容器は内部に空間を大きくとる必要がなく、小型に出来ます。いずれの格納容器設計も、同じ規制プロセスを経ており、要求される設計条件や規定も同一です。
ニューヨーク・タイムズ紙はまた、スリーマイル島と福島を比較し、スリーマイル島のPWR原子炉は水素爆発に耐えたと報じています。しかし、スリーマイル島の水素爆発は1次(原子炉)格納容器内で起きたのに対し、福島は原子炉建屋で起きています。原子炉建屋は2次格納容器であって1次格納容器ではありません。異なる事象であるスリーマイル島と福島の水素爆発との比較は、誤解を招きかねません。
使用された図においても、1次格納容器と2次格納容器が混同されています。「処理しなければならない熱量の解析結果と、その処理能力を有するトーラスを備える事で、GEは、外部の格納容器建屋(2次格納容器)はそれなりのものでよいと規制当局に納得させた」と記事には書かれていますが、事実は、以下のとおりです。
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トーラス(炉心のすぐ近くにあるドーナツ型の巨大な圧力抑制プール)は外部格納容器ではなく、1次格納容器です。
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外部格納容器建屋(原子炉建屋)は耐圧建屋として設計するものではありません。
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燃料交換時および設計で想定した状態において放射性物質の放出を抑えられるように、原子炉建屋(2次格納容器)は圧力を周囲よりもわずかに下げた状態に保ちます。
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1次格納容器の設計圧力(各格納容器系が耐えるように設計されている圧力)は、BWRもPWRもほぼ同じです。
ニューヨーク・タイムズ紙が第2段落に記載したトーラスの説明についても誤って報じられています。トーラスの圧力は負圧に保たれている訳ではありません。周囲と同じ圧力に保たれています。周囲よりもわずかに低い圧力に保つのは2次格納容器(原子炉建屋)であり、その理由は前述のとおりです。
ニューヨーク・タイムズ紙は情報をGEから得たとしています。GEがニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じたのは事実ですが、ニューヨーク・タイムズ紙が掲載した情報には誤解を招く表現が見られます。
この問題がとても複雑であることは疑いの余地がありませんが、ニューヨーク・タイムズ紙にはこの問題について細心の注意を払って報道していただきたいと考えます。
※本レポートは米国本社のウェブサイト、ge.com上に発行したGE Reportsの抄訳です。原文はこちら
2011年3月19日
マークⅠ型格納容器に関する事実-ニューヨーク・タイムズ紙報道について
東日本大震災により被災された皆さまとご家族の方々に、謹んでお見舞い申し上げます。
皆さまの安全、そして被災地が一日も早く復興することをお祈り申し上げます。弊社といたしましても、今後も引き続き全力で支援活動に取り組んでまいります。
GEと日立製作所は、両社の合弁会社を通じて原子力事業を行っています。グローバルではGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)が、日本国内では日立GEニュークリア・エナジー(HGNE)が事業運営にあたっております。
本ページでは、技術的に事実とは異なる表現が見られたニューヨーク・タイムズ紙のマークⅠ型原子炉格納容器についての記事(3月19日付)に関して、事実関係をご説明いたします。