山形県村山市の木質バイオマス発電所
発電所で稼動するGEイエンバッハ・ガスエンジン
【出典】
※1:『バイオマスハンドブック』 (社)日本エネルギー学会編 2002 オーム社
※2:Energy Information Administration 「Primary Energy Consumption by Source」2008
※3:IEA「Energy Balances of OECD Countries 2004-2005」(原子力を除く)
日本経済新聞社が2010年3月まで運営していたウェブサイト「日経エコロミー」に連載したものです。
この記事は2008年9月22日に掲載しました。
いま、話題のエネルギー資源・バイオマス。バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念です。一般的には、家畜排せつ物や生ゴミ、木くずなど、動植物から生まれた再生可能な有機性資源で、石油や石炭などの化石資源を除いたものを指します。いま、バイオマスが注目される理由はその特徴にあり、「カーボンニュートラル」および「再生可能エネルギー」資源であることが挙げられます。
地域の電力は、地域の資源で 山形県村山市・木質バイオマス発電所(08/09/22)
■注目されるバイオマス資源
「カーボンニュートラル」とは、言い換えると「その資源をエネルギーとして使っても大気中の二酸化炭素量には影響を与えないこと」。これは、植物などバイオマス資源が成長過程において光合成よって吸収する二酸化炭素の量と燃やしたときに出る排出量とが相殺される、という考え方に基づいています。資源のライフサイクルにおいて、二酸化炭素の新たな発生量がゼロとなるケースです。
「再生可能エネルギー」と言うと様々なものが挙げられますが、その中でバイオマス資源によるエネルギーは、つまり、主として植物によって取り込まれた太陽エネルギーであると言えます。生物が光合成によって、水と二酸化炭素から作りだすものであるため、持続的な再生が可能である点こそが石油など枯渇性資源との大きな違いです。
エネルギーとして利用可能なバイオマスには、林業資源(間伐材、建材などの廃材など)や農産物加工残渣(コーン、もみ殻、鶏糞など)があります。これらは固体燃料(木炭など)、液体燃料(アルコール発酵など)、気体燃料(メタン発酵など)というように、さまざまな形で利用することができます。
■世界需要の8倍ものエネルギー・バイオマス資源の、広い“ふところ“
ある試算があります。現在、光合成によって生産されている地球上のバイオマス資源をエネルギー換算すると、世界中で消費されているエネルギー量の10倍以上(※1)にもなるというのです。これだけのエネルギー量が再生可能なものとしてあるのにもかかわらず、実際に活用されているのはごくわずか、数パーセントしかありません。世界的に化石燃料への依存体制を見直そうという動きのなかで、伸び白の大きいエネルギー資源、バイオマスの活用が注目されています。
EUは、エネルギー資源としてバイオマスは水力、風力などよりもさらに重要だと考えており、研究開発の予算をとって、約1億トンもの二酸化炭素削減を目指しています。そして、使用するバイオマス素材を麦わらなどの農産廃物から木材へと拡大をはかっています。
アメリカでは、化石燃料の代替エネルギー資源として、バイオマスが最も多く利用されています(原子力を除く)。2004年以降、バイオマスは代替エネルギー資源のトップ。その供給量は増加を続けており、アメリカ国内で生成されている全エネルギー生産量の4%近く(単位は熱量換算)にもなります(※2)。計画では、これを今後さらに増加することとされています。
日本政府も平成18年(2006年)、新たに「バイオマス・ニッポン総合戦略」を見直し、省庁の壁を越える形でさまざまな支援(利用促進、未利用バイオマス活用等によるバイオマスタウン構築の加速化など)を行っています。
■さくらんぼの街の電力を生むGEのイエンバッハ・ガスエンジン
山形県村山市。さくらんぼ「佐藤錦」の名産地であるこの地に、2007年、木質バイオマスを利用した発電施設が作られ、1年間の試験期間を経て、2008年から正規運転が開始されました。この施設には、GEエナジーのイエンバッハ・ガスエンジンが採用されています。
1,000キロワット以上の規模を持ち、売電を目的とした事業性のある施設は、この発電所が日本で初めてのものになります。村山市は「バイオマスタウン」を宣言している153の自治体(2008年7月現在)のうちのひとつです。やまがたグリーンパワー株式会社(敬称略)は、こうした自治体の取り組みを受けて、木質バイオマス発電所を創設しました。従来の火力発電所のように直接木を燃焼させてその熱を利用する方法とは異なり、木質チップを炉に入れて蒸し焼きにしたあと、可燃性ガスを取り出し、そのガスで稼働するエンジンで発電を行います。このやり方(アップドラフト方式)では木を直接燃焼させた時に比べ発電効率が約2倍となるため、木質チップを最大限に活用できます。
山形県はバイオマス資源が豊富で、中でも木質資源の賦存量が多い地域です。地域の資源を大切にして「地産地消」しようという考えのもと、二酸化炭素排出量削減に積極的に取り組んでいる自治体の好例と言えるでしょう。
現在この発電所では、一日約60トンの木質チップを使用して2,000キロワットの発電を行っており、自家消費分の約300キロワットを賄うだけでなく、余剰分は売電しています。これを石油代替効果としてみると、年間約9,200トンの二酸化炭素(原油換算)を削減できることになります。京都議定書では、「温室効果ガス6%削減」を目標にしていますが、現実は削減どころか、逆に6.3%増加してしまっています。山形県村山市での好事例は、エネルギー自給率がわずか4%(※3)という日本にとって、代替エネルギーへの移行に向けた鍵となるのではないでしょうか。
GEは2003年に世界大手であるイエンバッハ社を傘下に収め、ガスエンジン・ビジネスを行ってきました。前述のとおり、EU諸国はいち早くその導入を進めましたが、これを横目に「高効率でクリーン」なガスエンジンが全世界から注目されています。日本でも、中小規模の分散型電源・熱併給発電機器としてすぐれた効率を持ちながらも環境に優しい、という点で代替エネルギーの担い手として注目を浴びているガスエンジン。従来はコストをかけて捨てていた有機廃棄物を、まるで宝のごとく、今後はエネルギー源として活用できるという「コスト削減効果(経済性)」も、ユーザーの皆さまの視線を集めているようです。
GEは引き続き、革新的な技術で各企業や団体の二酸化炭素排出量削減に貢献していきます。