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日本経済新聞社が2010年3月まで運営していたウェブサイト「日経エコロミー」に連載したものです。
この記事は2010年2月5日に掲載しました。
米マイアミでスマートグリッドを大規模導入へ(10/02/05)
米国フロリダ州マイアミ市において、スマートグリッドを実際に導入するプロジェクト「Energy Smart Miami(エナジー・スマート・マイアミ)」が始まります。このプロジェクトは、マイアミ市の約100万世帯の家庭などに無線通信機能を備えたスマートメーターを設置するものです。この結果、各家庭では電力消費量の削減、電力事業者では電力の安定した供給が可能になる見込みです。政府の景気支援策による資金を投じるこのプロジェクトは、成功すれば米国でも有数の大規模な スマートグリッドの事例となるでしょう。
「スマートグリッド」とは、その名の通り賢い(スマートな)電力網(グリッド)を指します。従来の電力網とは異なり、発電所から消費者に向かって一方的に電力を送配電するだけでなく、発電所から消費者の間で通信・IT技術を活用して電力の需給バランスをうまく調節し、電力不足に対処したり、電力の供給に伴う様々な課題を解決することが可能になります。スマートグリッドの構築に必要な設備やサービスは多岐に渡ります。具体的には、専用の通信インフラや、電力の需給状態に応じて動作を自動制御する「スマート家電」とその制御アプリケーション、各世帯の電力消費状況の送信やスマート家電の制御などを担う無線通信機能付き高性能電力メーター「スマートメーター」などです。
スマートグリッドに注目が集まる理由としては現在、再生可能なエネルギー導入の機運が高まってきたことが挙げられます。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、火力や原子力などとは異なり、常に一定の電力を供給できるわけではありません。さらに、その不安定さは電力品質の低下といった問題も引き起こします。そこで発電側と受電側で情報をやり取りし、電力の需給調整や各種問題の解決を実現するのがスマートグリッドです。特に米国では、オバマ政権による「グリーン・ニューディール」政策によって、再生可能エネルギーの導入や省エネ対策が重要な柱になっており、さらに、既存の電力網が耐用限界を迎えつつあります。このため、これらを機に電力網を一新しようという動きが出ているのです。
■スマートグリッドを100万世帯の規模で実施
新しい電力網であるスマートグリッドをマイアミ市に極めて大きな規模で導入する試みが「エナジー・スマート・マイアミ」プロジェクトです。このプロジェクトでは、約100万台の無線通信機能付きスマートメーターをマイアミ・デード郡の全世帯と事業体の一部に設置します。約100万台のスマートメーターを提供するのはGE(ゼネラル・エレクトリック)です。プロジェクトは、2009年末から2011年までの2年間で実施されます。必要な資金の半分に相当する2億ドルは、米国政府の景気刺激策による助成金を利用します。
プロジェクトに参加するのは、マイアミ市とGEのほか、フロリダ州全体に電力を供給するフロリダ・パワー&ライト(FPL)と通信インフラを提供するシスコシステムズ、ネットワーク・システム・プロバイダのシルバー・スプリング・ネットワークスです。GEは、発電技術や電力管理技術からスマートメーターまで、スマートグリッドに関する幅広い技術と製品を持っています。これらの要素技術と経験を生かして、今回のプロジェクトに貢献する考えです。
マイアミ市のマニー・ディアズ市長は、「今回のプロジェクトは、我々の都市やその住民の未来に対する投資です。また、環境関連産業に従事する『グリーンカラー』雇用の創出や、クリーン・エネルギー経済の構築に向けた重要なステップとなります。我々の活動は、民間のパートナー企業と提携して、政府の景気刺激策を実行に移す取り組みの手本となるでしょう」と述べています。
■スマートメーターで消費者の意識が変わる
家庭や事業所にスマートメーターを設置することで、消費者は自らの電力使用状況を簡単に把握することが可能になり、電力の消費について注意を払うようになることが期待されます。一方、電力供給企業であるFPL社は、電力使用の詳細な情報を収集することで、電力供給に関するシステムの効率化や信頼性向上に役立つデータを得ることが可能になります。GEでは、こうした効果によって、電力消費量の10~15%(*注1)を削減できるようになると考えています
マイアミの各世帯・事業体に設置されるスマートメーター。これにより、ユーザーは電力の使用状況をリアルに把握できる
なお、スマートメーターに実装する無線通信機能などは、オープンなネットワーク・アーキテクチャに基づいているため、ほかのプロバイダがスマート家電を製品化したり、その動作をより良く管理するアプリケーションを開発したりすることが可能になります。このほか、プロジェクトを実施する2年間で、環境関連産業に従事する労働者、いわゆるグリーンカラー雇用を800~1000件創出することを想定しています。プロジェクトが順調に進めば、米国で最も大規模なスマートグリッドの導入例となるでしょう。
GEが提供するスマートメーターは消費者の電力消費に対する姿勢を一変させる可能性を秘めています。米国の全世帯のうち10%が導入すれば、約67万5000台もの自動車から排出される370万トン以上の二酸化炭素(CO2)を削減するのと同じ効果が得られるという試算もあります。GEでは持続可能(サステナブル)なエネルギーの実用化に向けて、優れた関連技術の提供に力を入れています。「エナジー・スマート・マイアミ」プロジェクトはGEのビジョンを体現する場となり、ひいては21世紀の優れた先端技術の活用事例となるでしょう。
(注1)米国エネルギー省の年間調査によると、スマートメーターとスマートサーモスタットの導入を通じて、平均約15%のピーク需要の削減が可能となります。また、電力消費側にスマート電化製品とコンピュータ制御の「ホーム・エナジー・マネージャー(HEM)」を使う効果によって、エネルギーの消費量を抑えて電気料金を年間で約10%削減できるという試算もあります。