■アイデアを形にすることで、社会に貢献する
イマジニアリング社の社名の由来は、発想、創造(Imagination)を、“もの”に創り上げる(Engineering)ということから来ているとのこと。「できないといわれているところをやる。0を1にする。当社は、そういう産みの苦しみを楽しいと思う人間の集まりです」と池田社長は語ります。
GEの創始者であるエジソンは、「世界がいま本当に必要としているものを創るのだ」という有名な言葉を残しているように、技術は社会のためにあるということを常に意識していました。世界の潮流や求められているものを発見し、想像力を駆使して様々な問題解決に貢献する。経済性の追求と社会貢献を両立させるイマジニアリング社の発想や技術は、このGEのスピリットと多くの点で共通すると感じました。
「人、社会、地球、そして宇宙が欲するものを、アイデアを出すだけでなく、具現化する。研究者としてのモチベーションは、いかに社会に貢献できたかということにある。0から1を生み出そうとしているところを見ていただいたのはうれしい」。GE特別審査員賞受賞の感想を、池田社長はこう語ってくれました。
今回の審査やインタビューを通じて、日本企業が持つ高い技術力と環境対策への関心の高さをあらためて認識しました。GEは今後も、世界有数の日本のテクノロジーと、GEの研究開発力/事業推進力を組み合わせることでうまれる無限の可能性を追求していきます。
日本経済新聞社が2010年3月まで運営していたウェブサイト「日経エコロミー」に連載したものです。
この記事は2008年12月26日に掲載しました。
2004年に小池百合子環境相(当時)の呼びかけで創設された環境ビジネスウィメン、それに三井住友銀行、環境省、総務省の主催による「エコビジネスの芽を見つけ、育てるコンテスト、eco japan cup」が本年も開催されました。
VOCガスも、焼肉のにおいも撃退する先進技術――「eco japan cup 2008」GE特別審査員賞(08/12/26)
■エコマジネーションとeco japan cup
日本を代表する環境分野のコンテストであるeco japan cupは、“持続可能な社会を形成するには、経済そのものが今までと違う価値観を持つことが重要”として、「環境と経済の好循環社会・日本」の実現をめざしています。これは、このコラムでご紹介してきた、「エコロジー」と「エコノミー」、そして「イマジネーション」を融合したGEの環境戦略「ecomagination(エコマジネーション)」のビジョンと呼応するもの。今年3回目を迎えるこのコンテストには、本年よりビジネス部門<環境ビジネス・ベンチャーオープン>の中に「GE特別審査員賞」が新設され、その審査を務めさせていただきました。
今回は、“マイクロ波パルスプラズマ技術を用いたVOCガス低減”により、その第1回の受賞者に選ばれた、イマジニアリング株式会社池田 裕二社長へのインタビューから、同社の環境問題に対するアプローチや同技術のユニークネスをご紹介します。
■たったひとつの原理から出発する
受賞対象となった「マイクロ波パルスプラズマ技術」は、通常、大気圧下では発生させることが難しいプラズマを、大気圧下でも容易に発生させることができることが特徴。プラズマ発生時に生成される非常に酸化力の強いOHラジカル(注1)によって、有害なVOCガス(揮発性有機化合物)を瞬時に酸化し、無害化することができるというものです。
マイクロ波によるプラズマ放電
マイクロ波を照射して局所的にプラズマが発生しやすい環境をつくり、そこに点火プラグをスパークさせることでプラズマの成長が促進されるというのが、大気圧下での安定的なプラズマ生成を可能にした要因。点火プラグだけのプラズマ放電に比べ、非常に大きく安定したプラズマ放電が得られるのが特徴です。
実はこのマイクロ波は、家庭用の電子レンジにも使われているマグネトロンで発生させることができ、点火プラグもカー用品店などでも簡単に手に入る一般的なもの。複雑・大型で高価な設備でなく、短期間・低コストで製品化でき、既存設備へのプラグインによっても性能向上が容易に図れるという、市場導入のしやすさ、量産面・利用面での期待効果の大きさが、マイクロ波を用いるという着想のユニークさとともに受賞の大きな理由となりました。
(注1)OHラジカル:通常ペアで存在する電子が、何らかの原因により1個しかない状態をラジカルという。酸素(O)と水素(H)がそれぞれ1個ずつ結合した水酸化物イオンOH-から電子が奪われた状態をOHラジカルといい、他から電子を奪って安定化しようとする力が強いため、非常に強い酸化力を持つ。
■コスト10分の1以下に
池田社長によれば、この「酸化」という化学反応は、実に多方面に応用が可能です。たとえば、ものが燃えるのは炭素(C)と酸素(O2)が反応して二酸化炭素(CO2)になる、すなわち酸化されるということ。したがって、このマイクロ波パルスプラズマ技術を燃焼という面で捉えれば、エンジン内の混合気をより酸化しやすくすることによって、希薄であっても安定した高効率な燃焼が得られ、燃費も改善されるという、自動車などの製品性能の向上に貢献することができます。
一方、今回のVOCガスのように、成分を分解するという面で見ると、有害物質を酸化によって別の無害な物質(水や二酸化炭素)に転換することで、環境改善に大きな効果が期待できます(本技術開発は、NEDO技術開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発」(H18~H20年度)の一環として実施しているものです)。
たとえばホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエンなどを扱う塗装や印刷の現場における排気処理、さらにはシックハウス対策、ゴミなどの悪臭、焼き肉のにおいに至るまで、その利用シーンは多岐にわたります。さらに、触媒燃焼のようなこれまでの処理技術では、燃焼させるための大型設備などイニシャルコストが高く、燃料などのランニングコストもかさむという欠点がありましたが、酸化によるこの技術であればそうした費用は必要ないため、コストを10分の1以下にすることができるといいます。
また、殺菌・消毒など医療の現場にもその応用範囲を広げることも可能で、「OHラジカルによって酸化することで、CとH、Oでできているタンパク質も分解できる。細胞膜を溶かしてバイ菌を殺せるので、OHラジカルを使ったエアカーテンを通るだけで、殺菌・消毒されるという使い方ができる」(池田社長)というわけです。
燃焼も分解も、そのもとにあるのは酸化ということ。つまり、酸化というたったひとつの原理・原則を用いて、企業の競争力強化というビジネス的側面にも、環境や健康といった社会的側面にも同時に対応可能であるという、普遍的なアプローチが実現されるのです。「(酸化という)誰もが知っている原理をやっているだけ。この技術の説明をすると、みなさんコロンブスの卵だと言われますね」(池田社長)
イマジニアリング社長の池田裕二氏
点火プラグだけのプラズマ放電