日本経済新聞社が2010年3月まで運営していたウェブサイト「日経エコロミー」に連載したものです。
この記事は2009年4月7日に掲載しました。
前回の「GEとGoogleが連携し次世代電力技術―エネルギー・ITを融合」の中で触れた「スマートグリッド」。オバマ新政権の目玉である「グリーン・ニューディール政策」で取り上げられたこともあり、米国はもとより、欧州や日本でもにわかに注目を集めるようになりました。今回は、このスマートグリッドにおけるGEの取り組みについて掘り下げてみたいと思います。
低炭素社会実現のキー・テクノロジー「スマートグリッド」(09/04/07)
■ピークに合わせた生産設備、平常時は無駄に
電力網とIT技術を組み合わせることで、双方向の情報のやりとりを可能にし、より効率的な電力利用を実現するのが、スマートグリッド(賢い電力網)。電力網がインテリジェントになることで、電力事業者は、電力の消費状況を家庭単位・オフィス単位で把握することができるようになります。
では、それには具体的にどんな利点があるのでしょうか。スマートグリッドの導入によって生まれるメリットは、表1のように整理されます。
電力事業者の重要な課題のひとつは、できるだけ電力利用のピークを作らないようにすることです。電力は大量に作り置きすることはできないので、電気利用が過度に集中すると、発電容量が足りなくなって供給がストップするという事態が起こりかねません。このようなことがないよう、発電施設はピーク時にあわせて設備されているため、ピークと平常時の差が大きければ大きいほど、ピーク時以外には利用されない無駄な設備を抱え込むことになるわけです。ユーザー側ができるだけ電力料金の安い時間帯に電気を利用することでピークが分散されれば、発電量に余力ができ、安定運用が実現できるとともに、設備投資が抑えられます。
図1にあるように、日本では停電は滅多に発生しませんが、米国における停電時間は日本の約7倍にも上っています。スマートグリッドが米国でいち早く論議されているのも、こうした電力事情の違いが背景にあると言えます。
日本では、電力網の品質は非常に高く、配電自動化システムなどインテリジェント化も進んでいます。ところが、コントロールされるのは電柱設備までで、現在のところその先の家庭やオフィスまでの管理はされていません。スマートグリッドで拠点単位の管理が可能になれば、検針のようなルーティン業務はもちろん、災害時の電線切断箇所の特定といった、人間の目に頼っている作業も遠隔管理下で行うことができ、運用コストの削減につながります。
一方ユーザー側では、電気料金をより安く抑えることが期待できます。現状では、月に1回届く請求書を見て、今月は高かった、次の月はあまり使わないようにしよう、という方が多いのではないでしょうか。しかし、なぜ高かったのかは、はっきり把握できないケースがほとんどでしょう。せっかく電気を節約しようという気持ちになっても、何を、いつ、どれぐらいセーブすればよいのか、明確な指標がありません。スマートグリッドによって、スマートメーター(電力計)が各家庭に取り付けられれば、利用量、利用時間などが家電機器単位で「見える化」され、リアルタイムに把握することもできるでしょう。
■電力事業者、ユーザー、社会の「三方一両得」
米DOE(Department of Energy)が実施した調査では、スマートメーターの導入により、電力使用量が10%程度削減されるというデータがあります。目標が数字でわかれば、料金の安い夜間に洗濯をするといった具体的な行動も起こせるというわけです。加えて、エアコンの設定温度を電力網側から操作して適正に保つなど、ユーザーが意識しなくても省エネが行えるといった「自動化」(DMS:Demand Side Management)の仕組みも将来的には可能とされています。
このように、各家庭の暮らし方に即した電力利用が実現されれば、将来的には時間帯ごとに料金設定を変えた、カスタマイズ型の料金体系も可能になるかもしれません。また、利用の仕方を変えるだけでなく、たとえば太陽光発電を設置した家庭では、より買い取り価格の高い時間帯に余剰電力を増やすといった、売るためのインセンティブも働くようになるでしょう。電力事業者側にも、よりスマートな電気の使い方を提案する新しいビジネス・チャンスが生まれるかもしれません。
これらの結果として、省エネルギーを意識したライフスタイルが定着すれば、環境負荷の低減という社会としての課題解決にもつながります。また、先ほどのDMSに対応した家電製品への需要が高まれば、新しい市場の開拓が進み、産業面から見てもプラス効果が望めるでしょう。このように、スマートグリッドは、電力事業者、ユーザー、社会というすべてのステーク・ホルダーに対してメリットを提供する「三方一両得」の仕組みなのです。
米国では、スマートグリッドの実用性を検証するため、北部カリフォルニア州、オハイオ州、デラウエア州などで大規模な実証実験を行っており、GEはスマートグリッド関連製品の提供を通じて、これらのプロジェクトを支援しています。また、キャップジェミニ、シスコシステムズ、ヒューレット・パッカード、インテル、オラクルの各社とともにスマート・エナジー・アライアンスを結成、IT、通信、電力の各技術がより緊密に連携した、次世代の電力供給システムのスキームづくりもスタートさせています。
さらに、昨年発表されたグーグルとのアライアンスもスマートグリッドが対象の1つとなっています。
日本においては、スマートグリッドへの取り組みはスタートしたばかりです。日本では、計量法の対象計量機器である電力量計は10年ごとに検定が義務付けられているため(注1)、年平均で約10%が検定のために置き換えられています。そのすべてにスマートメーターが採用されたとしても、10年以上の期間が必要となるため、スマートグリッドの導入は長期的な取り組みになると見込まれていました。しかしながら、その重要性は徐々に認知されつつあり、ITや通信ネットワークのパフォーマンス/コスト効率の飛躍的向上により採算性が見込めるようになったことから、電力事業者の間にもスマートグリッド導入への気運が高まって来ています。
GEでは、電力事業者への提案をすでに進めており、供給側、利用側、そして社会全体にとって有益なスマートグリッドの早期実現をめざして、これからも積極的に取り組んでいきます。
GEスマートメーター
GEは、スマートグリッドに積極的な米国においても、もっとも早くからこのテーマに取り組んだ事業者のひとつです。発電・送変電設備からエンドユーザー向け製品に至るまで、電力に関わるすべての領域においてフロント・ランナーである強みを生かした、包括的なサービスの提供を推進しています。
GEのスマートグリッド・サービスは、スマートメーター、制御・管理用ソフトウェア/ソリューション、モニタリング/センシング・システムの3つで構成されます。その中核であるスマートメーターは、様々な通信方式に対応した高機能メーター設備(AMI:Advanced Metering Infrastructure)ソリューションとして、電力利用量、利用時間、電力消費サイクル・パターンなど、電力の利用状況をユーザーが客観的に把握する数々のデータを提供するだけでなく、電力品質を監視するデータも取得することが出来ます。米国をはじめ、カナダ、中南米、オーストラリア、メキシコ、スウェーデン、イギリスなど、世界各国ですでに販売されており、着実に実績を上げています。